消費税の課税事業者だった個人事業主が将来を見据えて廃業し、法人成りしたとします。
その際、それまで事業用資産として計上していた倉庫を自家用車の車庫として使うと、個人用資産を個人へ譲渡したものとみなされて、消費税が課税されます。
棚卸資産以外の建物や車両など事業に使用していた資産を自分で使用すると、消費税の「みなし譲渡」の規定が適用されてしまうからです。
みなし譲渡とは、企業や個人が無償もしくは著しく低い価額で資産を譲渡した時、時価で譲渡したとみなして税額の計算を行う、税法上の規定です。
このとき簡易課税の適用を受けていると、事業用資産の譲渡が第四種事業に該当するとして、60%のみなし仕入率で控除対象仕入税額を計算できます。
一方、簡易課税の適用を受けていなければ、消費税額から控除できる課税仕入等の税額がない為、そのみなし消費税額を全額納付しなければならないのです。
事業廃止のタイミングによっては思いがけない納税となることも有り得る為、簡易課税事業者選択の有利不利の選定や、免税事業者になってから事業廃止するなど、あらかじめ考慮しておくのが良いでしょう。
また、個人事業から法人成りすることで、資産の引継ぎ問題も出てきます。個人事業用として使用していた設備や在庫をどのように法人に移管させるかの手法は様々で、譲渡・賃貸・現物出資・贈与などの方法がありますが、その際には何らかの不備や書類ミスなどが無いようにしておきたいものです。